仔猫のナイショ そのごぉ
 〜寵猫抄より 
                ( お侍 拍手お礼の六十六 )
 


秋ってゆのが来たってお話は、
もうちょこっと前から聞いてたの。
うん、シチがシュマダとそぉゆーお話してたのね。
だってゆのに いちゅまでもあちゅいでしよねぇ、
困ったまったって。

 「にぃ?」

にゃ? クロたんはあちゅいのへーき?
困ったまったしなーの?
うと、キュウもホントは
元気元気で困ったまったまではしゅないのネ。
でもね、あのね?
シチはあちゅいの、きやいなの。
あと、黒くってしゅばやくって
かさかさってゆアレもね、めんめなの。
だからね?

 「みゅいにぃvv」

そーなのvv
シュマダがいないときゅわ、
キュウやクロたんで“だいじょぶ?”って
ちゃんとちゃんと ちゅいしてないとね♪
いちょに ばんばろーね


    ◇◇



キンモクセイの甘くて華やかな香りが、
何かの拍子ふと漂ってくると、
ああ秋だよなぁという感慨もひとしおで。
大窓から差し入る金色がかった光の中、
どちらも幼く無邪気な仔猫さんたちが
お膝周りという間近で にゃあにゃと。
小さなお手々でのちょっかい出しが
嵩じてのこと絡まり合ってしまってか、
一緒くたになってのころんころんとまろぶよに、
屈託なくじゃれ合っているのが、

 「〜〜〜〜〜。/////////」

洗濯物を畳む手が止まってしまうほどに愛らしく、
口許がついついむずむずしてしまうほども
ツボでツボでしょうがなく。
勘兵衛のいない場でなら
例の“惚れてまうやろ”を
思う存分発揮しても構わないかなと思わぬでもないながら。

 “…いかん、いかん。////////”

あんまり愛らしいものだからと、
ついつい見ほれすぎてのこと、
先日もついうっかり、郵便屋さんが来ていたのに気がつかなくて、
急ぎの資料だったのを“ご不在だったようなので”と
そのまま持って帰られてしまったっけ。
あんまりぶんぶんとかぶりを振っていたものだから、

 「にゃあ?」 「みゅいにゃ?」

却って不審がられていては世話はなく。
じゃれあっていたのを停めてまで、
ぱたたっとかけ寄ってくれた坊やと仔猫へ、
何をどうと取り繕うのもナンだしと、
えーっとう―っとと言葉を捜したその末に、

 「…テレビでも観よっか?」

淡い緋色のTシャツに、
少し大きめ、誰かさんのお下がりのYシャツ、
暖かそうに重ね着たなで肩を落としつつ。
子供の無垢な眼差しから逃げるのは、
まだまだ難しいおっ母様であるらしいです。





  ● おまけ ●

ちゃららかちゃんと、軽やかな音楽とともに始まった、
お宅のペット紹介してね系の番組は、
再放送込みでこの一家の定番視聴番組となりつつあり。

 「みゃうにゃvv」

久蔵も、ふわふかなわんこやニャンコを観るのは楽しいか、
ご機嫌そうなお顔でいるものの、

 「みゅう?」

新しい顔ぶれ、
クロちゃんがおややぁと小首を傾げたのが、CMに入ってから。
新製品の猫缶を、
それはきららかなクリスタルグラスへ盛って紹介しており、

 「ああ。これは猫のごはんだよ?」

猫の絵が描いてあるって不思議だし、
考えようによってはおっかないことだよねと苦笑をし。
実は彼もそこのところが良く判らなくって それでねと、
随分と以前になるが、いつものごとく
“判らないことは勘兵衛様に訊こう”を繰り出したんだよと、
仔猫たち相手に続きを話してやる。

 「勘兵衛様が言うには、
  なまじ魚や牛肉の絵を描くと、
  普通の缶詰と間違えて
  人が食べてしまうからじゃないかって。」

人用のよりいろいろ凝ってるそうだし、安くもないのにねと
それを訊いた折のよにくすすと笑った七郎次で。

 『何も中味の絵を描かずとも良かろうよ。』

赤ん坊用のミルクには赤子の絵が描いてあろうがと、
選りにもよってな おっかないことを
例えにした勘兵衛だったのまでもを思い出し…。
さすがにそれは口にしなんだ彼だったけれど。
(苦笑)

 「…そういや、久蔵にも食べさせたことないものね。」

だって、それこそこうまで愛らしい坊やを相手に、
これを買って食べさせようとは思わぬもの。
でもでも、玉葱はだめとかチョコには注意とか、
猫なんだからという用心もしてきたわけで。

 “…美味しいのかなぁ。”

こういうのって薄味だって聞くけれど…
でも、聞いた話じゃあ
人間用の缶詰より高かったりするそうだしなぁと。
笑い飛ばすつもりだったのに、
何だか妙に気になりだした秘書殿だったらしくって。

  …勘兵衛様、気をつけないと
  お夜食とかに間違えて出されても知りませんぞ?
(苦笑)



    〜Fine〜  11.10.01.



  *猫缶とは言うけれど、
   犬缶とは言わないのは何ででしょうかね。
   …じゃあなくて。
   綿毛のような金髪に
   ふわふかな頬した可愛らしい坊やの久蔵ちゃんを前にして、
   猫缶を買おうとはさすがに思わなかったシチさんで。
   ン年目にして初めて気がついた盲点、だってか?(笑)

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